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第586話
「ご馳走さま。
美味かった」
「ん。
良かった」
「作ってもらったし、俺が洗い物する」
「良いよ。
勉強しろって」
背中をグイグイ押され、降りてくる時に一緒に持ってきた参考書を手渡される。
次男のお陰で人間的な昼を過ごせているが、そこまで甘えても良いものか。
次男にとっても、大切な夏休み期間だ。
夏休みにしか出来ないことは多々ある。
バイトに青春、友情だって。
「優登、優登はちゃんとしたいこと出来てるか」
「兄ちゃんの世話。
今まで沢山助けてもらってきてんだから、恩返しさせろよ」
「そんなこと思ってたのか…?」
「6歳って、案外でかいからな」
自分の大切な弟だから、特別なにかを意識してしてきたつもりはなかった。
一緒に夏休みを過ごすのも、昼飯を食べるのも、勉強を教えることだって。
だけど、弟にとってはそうではなかった。
そこに感謝の気持ちを感じていた。
兄弟なんだから気にする必要はない。
甘えれば良い。
きゅっと上がった口端がそっくりな弟。
細くて、白くて、ふやふや笑う次男。
高校に入学して、随分と大人になった。
嬉しくて、嬉しくて、だけど少しだけ寂しい。
だけど、やっぱり嬉しい。
「ありがとう。
じゃあ、お言葉に甘えさせてもらう」
「おう。
あとでおやつも用意するから、それまでは勉強な」
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