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第587話

グーッと伸びをすると身体の節からパキッと音がした。 「縮こまって勉強してんだろ」 「机が小さくて…」 夜になっても気温が下がらず暑いままの夜になってきたが、今日も恋人とデートだ。 恋人。 恩師。 目標。 お手本。 長岡に会うと気力が沸いてくる。 試験の結果が届くまであと僅か。 ソワソワしてしまうのも、恋人の隣では落ち着く。 長岡が大丈夫と言ってくれた。 なら、大丈夫だ。 心の底から、そう思えるから。 長岡の言葉1つで心が軽くなる。 不思議だ。 この声のお陰だろうか。 それとも、好きな人だから。 どちらでも良いか。 だって、事実はどう転んでも事実なのだから。 「もう少しですから」 「そんな時に俺と会ってて良いのかよ」 「正宗さんに会えた方が勉強が進みます。 ……褒め、ますか…?」 おずおずと申し出ると、長岡はくしゃっと笑った。 そして、すぐに男らしい腕が伸びてくる。 「俺の自慢だ」 汗のにおいがする。 だけど、良いにおいだ。 大きくて、大好きで、安心する。 襟足を撫でられ、外だと言うのに構わず背中に腕を回した。 「負けんな」 「はい」 「俺のこと、追い越せ」 「それは…、精進します」 「期待してる」 ジワジワと汗をかきながらも離れがたい。

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