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第591話

「あいすー」 「おやつだよ」 「えぇ」 三男と母親の声を聞きながら階下へ降りてくると、なんだか外から話し声が聞こえてくる。 先程、次男がコンビニまで行ってくると言っていたが、帰宅前にご近所さんに絡まれているのだろうか。 適当なサンダルを突っ掛けて、玄関ドアを開けるとムワッとした空気が肌に纏わり付く。 道路にいると思っていた次男は家のすぐ目の前におり、郵便配達の人と話していた。 「あ、兄ちゃん」 「じゃあ、失礼します」 「ありがとうございました」 「これっ」 優登の手には封筒。 そして、そこには自分の名前が記載されている。 咄嗟に思った。 一次試験の結果だと。 今来た道を戻り、リビングの棚から鋏を取り出すとジャキっと封を切った。 なんだろう。 急に、口が渇いてきた。 だけど、手だけは勝手に動いてくれる。 「っ!」 「兄ちゃん…」 努力なんて、報われないことの方が多い、 なのに…、なのに…… 「二次試験受けれる」 「っ!!」 「遥登、おめでとう」 「はう、すごい? いーこ、いーこ」 「うん。 良い子良い子」 パッと嬉しそうな顔をした綾登が手を伸ばす。 同じ目線までしゃがみ込めば、小さな手が前髪を撫でた。 「ケーキ買ってきてもらおっか。 あと、ちらし寿司しよ」 「え、一次試験だよ」 「あら、お母さんが自分の子供を甘やかす理由には充分でしょ」 本当に家族には勝てない。 だけど、すごく、すごく嬉しい。

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