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第592話

食後に父親が買ってきてくれたケーキを食べながら、ぼんやりと思った。 夢に1歩近付いた。 目標の恩師の背中に、1歩近付けた。 小さな1歩。 だけど、とても大きな1歩だ。 早く知らせたい。 自分の言葉で。 声で。 なので、夜に時間を都合して欲しいとだけ連絡をした。 会いたい。 早く会いたい。 「おいし、ねぇ」 「美味しいね。 お祝いだから、尚更美味しいね」 「はう、すごいね」 「凄いな。 沢山頑張ってからな」 「んっ! はう、いーこっ」 「ありがとう」 「んへへへぇ」 満面の笑みが溢れる。 まるで自分のことのように喜んでくれる弟達。 両親も嬉しそうだ。 長岡は、どんな顔をするだろうか。 どんな。 早く、見たい。 知りたい。 伝えたい。

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