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第593話
「兄ちゃん、風呂空いたー」
「ありがとう」
その言葉に動かしていた手を止める。
そして、机の上をそのままにグーッと伸びをした。
パキパキと身体の色んなところから音がする。
今度は、伸びたまま身体を捻ったり。
そして、ストンと腕をおろした。
よしっ
行くか
汗をかいたので風呂でさっぱりしたい。
だけど、それよりも恋人に会いたい。
その為に家から抜け出る。
スマホで時間を確認すると、そろそろ此方へと来る時刻。
入浴後の着替えとマスクを持って階下へと急いだ。
着替えを浴室へと残し、裏口から家を抜け出す。
冷房のない外は、ムワッと蒸して不愉快だ。
だけど、今だけはそんなの気にならない。
足が勝手に急ぐ。
手がスマホを握り締める。
緊張すらしている。
色んな感情がごちゃ混ぜだが、1つだけ確かなのは会いたいという願い。
結果がどうこうではない。
長岡だから。
世界で1番好きな人に会いたい。
たったそれだけの渇望。
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