「おいしーっ」 「美味いだろ」 「だいすき！」 「俺？」 「ちあう。 くっきー」 弟達に挟まれる三条の口にクッキーが運ばれてくる。 「はぅ、どーそっ」 「ありがとう」 サクサクしたクッキーをよく噛み締める。 弟達の来客で、部屋の中は急にまったりしだした。 勉強ばかりの毎日の中の楽しみ。 画面の向こうの長岡は、気配を察知しカメラから見えない場所で読書中。 この声も聞こえているのかと思うと少し恥ずかしいが、長岡は兄弟仲の良さに微笑むだけ。 そういう然り気無い優しさが長岡の人となりを表している。 そもそも強姦してきた人とは思えない。 「これ、クッキーにマシュマロ乗せて溶かしたら美味そう」 「あー、美味いやつ」 「してこようかな」 「なぁに？」 スモアについて説明すると、キラキラと目が輝く。 そして、すぐにマシュマロを１つ手に握り次男を引っ張って部屋から出て行ってしまった。 食に対して貪欲なのは兄弟譲り。 それが可愛くてしたがない長男も、その背中を追った。