600 / 729
第600話
弟達が階下や自室へと戻り、部屋の中は静寂が包む。
そんな中でも勉強は続く。
少しでも多くのことを頭に詰め込みたい。
理解したい。
噛み砕きたい。
伝えたい。
だけど、おやつを食べたからか目蓋が重くなってきた。
『少し休憩だ』
「え…?」
『休憩。
今覚えたことを頭に定着させる時間だ』
ソファに寝転びながら本を読んでいた長岡は、身体を起こし本を脇へと置いた。
本当に目敏い人だ。
『それと、少しだけ昼寝するから付き合ってくれ』
「はい」
『うん。
良い子だな』
長岡に習い、床に寝転ぶとサラッと髪が溢れた。
家のシャンプーのにおい。
恋人が恋しくなり、ベッドの上へと手を伸ばした。
すぐに落ちてきたシャツを抱き締める。
自宅のものとは違う洗剤のにおい。
それと、恋しいにおい。
『軽くで起こすから』
「はい」
どうせなら、長岡の夢をみたい。
隣で眠る夢。
ともだちにシェアしよう!