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第603話
大きな欠伸を1つ。
時刻は日付けを跨ぎ、40分ほど。
丁度本も読み終わり集中力が切れた。
『正宗さん、先に寝てください』
「んー、そうさせてもらおうかな」
にこっと笑う三条は、まだまだ試験勉強を続けるのだろう。
自分ばかり寝て申し訳ないが、明日も仕事だ。
公務員に盆休みはない。
交代で夏休みと言う名の有給をとるが、盆に被せるのは既婚者達。
独身や、盆休みに合わせなくて大丈夫な人達は休みをズラす。
そちらの方が、なにかと空いていて動きやすいのも事実。
どちらに標準を合わせるかは、その人次第だ。
「なんかあれば起こしてくれ」
『はい』
麦茶の入っているマグを煽り、すべてを腹の中へと収めるとシンクへと持っていく。
さっと洗い、どうせ起きたら使うのでタオルの上へと伏せた。
自堕落だが、その為の一人暮らしだ。
存分にダラけさせてもらう。
「カメラ揺れるぞ」
三条が映る画面とスマホを持ち部屋の電気を消し、寝室へ。
そのままベッドに寝転びたいが、電子機器を持っているのでそれらをサイドチェストの上へと置いた。
案外、こういうことで酔うと癖になってしまうから注意するに越したことはない。
本当は、もう少し三条と同じ時間を過ごしていたい。
頑張る姿を見守りたい。
けれど、大人はそんなことばかりは言えなくて。
「じゃあ、寝るな。
遥登も、根詰めすぎんな。
頭焦げんぞ」
『頭が焦げるって…』
クスクスと笑う姿に安心し、枕に頭を付けた。
「ほんと、ほんと」
『おやすみなさい』
「ん、おやすみ」
三条のペンの音を子守唄に目を閉じた。
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