604 / 638
第604話
キリの良いとこまで。
もう少しだけ。
そんな自分に都合の良い言葉を選び、時刻は3時。
流石に寝た方が良い時間だ。
日中に昼寝をして体力回復を謀るにしても、ある程度は生活リズムを整えておかないと休み明けに厄介だ。
付箋に、おはようございますと挨拶を書き、更に熱中症に気を付けるようにメッセージを書き足した。
長岡の起床時間にアラームで起きていたのを、夜中まで勉強をするなら少しでも睡眠時間を確保しろと止められ、最終的にはこの形に落ち着いた。
顔を見られない寂しさはあるが、長岡が家を出るまでには目覚めるので、いってらっしゃいと言えるのは嬉しい。
やっぱり、好きだと思う瞬間でもある。
そうして出来上がったそれをカメラから見える位置に貼り付ける。
少しだけ擦れ違いをしてしまうが、今が踏ん張り時。
ジャンプの前の縮こまるあの瞬間が今。
長岡もそうしてきたのだろう。
不思議だ。
憧れに、手が届きそうなんだ。
あんなに遠くに見えていた“ロマン”が、机の上に広がっている。
キラキラ。
ピカピカ。
だけど、濃い影もくっきりと見えている。
これが、教職。
ふとんに潜り込み、綺麗な寝顔をぼーっと眺める。
沢山、話したいことがある。
沢山、傍にいたい。
沢山、沢山、したいことがある。
全部長岡とだ。
頑張ろう
「正宗さん、おやすみなさい」
小さな声は外の虫の声に混ざる。
今日も、夢の中で会いたいです
ともだちにシェアしよう!