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第611話

寝室に入っても長岡はそれとを隔てるドアは閉めなかった。 日常と地続きのままセックスをするのか。 気になってしまう顔を手で誘導された。 まるで見詰め合うように視線が絡む。 「似合ってるけど、脱ごうな」 首元からネクタイを引き抜かれ、また落とされた。 すごくいやらしい。 雰囲気も、空気も、長岡も。 ずっと勉強ばかりだった。 自分の為に。 だけど、本当は甘いのも欲しかった。 極上の甘いの。 それが、目の前にある。 “待て”ももうない。 布切れの音すらえっちに思えてくる。 思わず、ゴクッと喉が鳴ってしまった。 「…っ」 「ちゃんと期待通りにしてやるよ」 ワイシャツのボタンがすべて外れると、今度はベルトへと手が下がる。 「これで、縛るのは今度な」 「え……」 あっという間にフロントボタンが外れ、チャックが下げられた。 細い身体では、それを抑えることは出来ず重力に従いスラックスは落ちる。 足に絡まったままのそれにお構い無く、ベッドへと押し倒された。 ぽふっと濃くなる恋人のにおい。 視界も恋人だけ。 これだけで、ご褒美だ。 だけど、まだはじまったばかり。

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