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第630話

「そろそろ時間か。 送る。 デートもしようぜ」 嬉しそうな顔に、ブンブンッと揺れる尻尾。 散歩を全力で喜ぶ犬みたいだ。 先程のセックスの色気は微塵もなく、普段の清潔な姿。 緊張も溶けあれだけ動けば、今日はぐっすりと眠れるだろう。 なにせ、夏休みの真っ最中でもあるのだから。 車の中で寝たって良い。 そんな気持ちを込めて頭を数度ポフポフと撫でた。 「デート、嬉しいです」 「コンビニでお菓子も買うか。 いや、飯の前だったな」 しっかりとスーツを着込んだ姿に、笑みが浮かんでしまう。 すっかり大人だ。 高校生の時とかわっていないようで、うんと成長した。 嬉しくて少しだけ寂しい成長。 そんな姿をこうして隣でみることの出来る喜びは大きいが、寂しいのは寂しい。 過去には2度と戻れないから今が愛おしい。 そんなことを思い知らされる。 「アイス…半分こしてくれませんか…?」 「あぁ。 しようか」 「はいっ!」 こじつけのデートで一緒にいる時間を引き伸ばす。 だって、離れがたいから。

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