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第635話

駐車場からの道すがら、向こうから影が伸びてきた。 嬉しそうな顔。 それだけで、世界中のしあわせを願う。 顔も知らない誰かさえ、しあわせであってくれと。 それほどまでに自分を満たしてくれる子が、大きな荷物を持って駆けてきた。 「正宗さんっ、こんばんは。 約束の花火です」 「覚えて…るか。 遥登だもんな」 「はいっ」 にこにこと屈託なく笑う恋人には敵わない。 こういうことをサラッと出来てしまう格好良い自慢の恋人だ。 小さな約束のつもりだった。 だけど、三条にとってはそうではなく、大切な約束だった。 それが、とても嬉しい。 「それから、コンビニでケーキも買いましょう。 誕生日なんですから」 「じゃ、今日は楽しませてもらうな」 「お任せくださいっ」 今日は8月26日。 長岡の誕生日。

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