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第636話

三条の暮らす町から15分程移動し、河川敷の公園へとやって来た。 花火も可能な公園だが、深夜という時間もあり人気はない。 だが、今はそれすら都合が良い。 三条は運転をされることに眉を下げたが2人きりになれることの方が重要だ。 折角の誕生日だというなら、そこだけは譲れない。 「ありがとうございます。 奥の行きましょう。 今日は、俺が正宗さんを一人占めですから」 「それは俺の方だっつぅの。 誕生日なんだから、甘やかしてくれんだろ」 「はいっ」 嬉しそうな顔は長男のもの。 だけど、しっかりと恋人の顔のままだ。 この顔も好きだ。 自分だけが見られる特別だから。 上がる口端を隠すことなく、手を繋いで奥の暗い場所を目指す。 「楽しみですね」 「あぁ。 それにしても、沢山買ってくれたんだな」 「正宗さんのお強請りですから」 「長男気質ってすげぇな」 途中の水道で水を汲み、更に奥へと進んだ。 コンクリート敷きで花火可の表記も確認。 そうしてやっと花火だ。

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