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第638話

写真を撮ったり、動画を撮ったり、楽しい時間を過ごしていると、隣から伸びてきた大きな手が自分のそれを握ってきた。 大きくて冷たくて、大好きな手に握られると嬉しい。 手から視線をゆっくり上げ、目を見ると恋人の目も嬉しそうに細まっている。 「今は、遥登のこと一人占めしてんだよな」 「はい。 なにかして欲しいことはありますか?」 「なんでも?」 「誕生日ですから」 折角の誕生日なのだから、自分に出来ることならなんでもしたい。 それに新学期がはじまって、直接やオンラインで会える時間が短くなった。 いや、それに関しては睡眠時間を優先して欲しいので良いんだ。 目標の恩師は、きっちりと線引きが出来る人だ。 好きになったのもまた然り。 ただ、だからこそ、会える時間は大切にしたい。 「少しだけ遥登のこと独占してぇ」 「え…、と……はい」 耳打ちされる言葉の意味を、この頭はすぐに理解する。 じわ…っ、とアツくなる頬のまま頷いた。 「後悔しないって、言いましたし…」 それに。 「俺も、したい…です」

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