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第640話

「…、」 「大丈夫か?」 「だ、いじょぶ、です」 長岡が車を停車させたのはラブホテルの駐車場。 三条が行きたい、と言ったのだが、いざ到着するとガチガチに緊張している。 辺りが暗くなり、あからさまに“そういうホテル”ですとばかりのアピールが目立つのも要因だ。 なんで田舎のラブホテルはこうも周りに溶け込まず、ラブホテルですとアピールするデザインが多いのか。 「その顔、見てみるか?」 「大丈夫…です…」 途中で買ったケーキを持ち、車から降りた三条は早足で入り口を抜けた。 案外と言ったら失礼だが、柔和な見た目より男前な性格は清々しい。 明らかな飲食物を持っての来店なら、セックスをするのかどうかは一見して分からないだろう。 事後は簡単に判別されるが。 それでも、ケーキとお茶のペットボトルは三条にとって必要な物。 勇気をくれるものだと分かる。 まさか、ラブホに行きてぇって言われると思わなかったな 今回は近場で選んだけど、次は良いとこ連れて来てぇな 「クリーム、ダレちゃいますよ…」 「ん。 今、行く」 ま、涼しい部屋で食えんだから良いか

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