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第642話
流石に備え付けの食器類を使う気にはならず、コンビニで購入したフォークでケーキをつつく。
飲み物もペットボトルだが、これで良い。
飾らない関係がお互いが気持ちの良い距離感だから。
家族のような、だけど恋人の甘さもあるこの空気が好きだ。
「正宗さん、美味しいところです」
「じゃ、遥登にはこの美味しいところな」
「2個食べら良いのに」
互いの苺を交換し、甘い時間を過ごす。
そうしている内に三条は場所のことを忘れ、ふにゃふにゃしている。
ゆるっゆるの表情筋。
弾んだ声。
直接会えたことがなによりのプレゼント。
いくら金額を詰んだって手に入れることが難しいプレゼントだ。
望んでいたものが、触れることの出来る距離にいる。
だから、手を伸ばした、
「片付けは俺がやるから、甘やかしてくれよ」
「…っ!」
ソファに押し倒すと色の白い肌が真っ赤になった。
驚いた顔はすぐにきゅっと口を結び、そしてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「食って、ください…」
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