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第662話

食事が終わると、三条はまたケーキを差し出してきた。 「もう食ったろ」 「ケーキは1日に1個だなんて決まってませんよ。 それに、誕生日なんですから」 甘やかしは加速する。 こういうところを見ると、家庭内での三条が想像出来る。 これなら、弟達もべったりだろう。 その気持ちは、よく分かる。 「じゃ、遥登が食わせてくれ」 「え…」 「脚の上こいよ」 ポンッと胡座をかいた脚を叩く。 皿とフォークを持ったまま動けなくなった三条に、更に続けた。 「誕生日なんだろ?」 「……はい」 食器を置き、おずおずと近付いてくる様にゾクッとした。 「あの、…失礼、します」 「顔、見えねぇ」 「……」 無言のまま向き合う体制になる。 その顔は真っ赤で、腰も今にも引けそう。 逃げることが出来ないように腰の後ろで手を組み、少しだけ寄せてみた。 「…や、らしいのは駄目です…」 「夜はしてくれたろ」 「それは…」 「かわい」 「…チーズケーキで良いですか」 「ん。 あー」 素直に運ばれてくるフォークを口に迎え、その甘さを噛み締める。

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