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第665話

ケーキののった皿を机の上へと置くと、首に腕を絡めた。 「大好きです」 「俺も大好きだ。 今日は沢山ありがとな。 すげぇしあわせな1日だ」 お互いの心臓の音が溶けて、混ざり合うかのようだ。 心地が良い。 サラサラした髪を梳くように撫でながら、ゆっくりとした時間を味わう。 三条の重みも体温も、においも。 そのすべてがプレゼントだ。 「秋になって涼しくなったら、紅葉見に行くか」 「良いんですか…?」 「握り飯持っていこうぜ」 細められる目が、とても綺麗だ。 その目に化粧をした木の葉が写るのはもう少し先。 だけど、今から約束を取り付ける。 その方が、楽しみがあって毎日を頑張れる。 夏休みが明け、試験に文化祭。 球技大会。 修学旅行と学校行事は目白押し。 雪が降るまでに、粗方の行事を終わらせなくてはいけない雪国は忙しい。 それを乗りきれるように。 そして、三条の結果が出るまでソワソワしないように。 「約束です」 「あぁ。 約束」 子供のように小指を絡め、約束を結ぶ。

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