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第667話

誰もいない海岸を眺めることの出来る駐車場に車を停車させる。 だだっ広い海も空も2人占め。 「運転ありがとうございました」 「どういたしまして。 腹減ったろ。 飯食うか」 「はいっ!」 シートベルトを外すと、後部座席に置かれた鞄へと手を伸ばす。 出掛ける前に2人で握ったおにぎり。 三条の味付けのたまご焼き。 焼いただけのウインナー。 冷凍のからあげ。 それらが詰まったタッパーは、ずっしりと重い。 だけど、三条ならペロッと食べてしまう。 それが見たくて、それがたまらなく愛おしくて、この時間を約束した。 まさか、涼しくなるのにこんなに時間が必要だとは思わなかったが。 「正宗さん、ウエットティッシュです」 「ありがとな」 手洗いかわりのおしぼりで手を清潔にする。 育ちが良いなと思うそれも、今はすっかり長岡にとっても癖になった。 そうしてやっと、手を合わせる。 「いただきます!」 2人でタッパーの中を覗き込みおにぎりを選ぶ。 今日も、具は様々だ。 どれになにが詰まっているか。 そのワクワクは楽しい。 「からあげです!」 「こっちは明太子」 「正宗さん、両方入ったの握ってましたよね。 当てたいです」 「これじゃねぇか?」 「じゃあ、次はそれにします」

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