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第668話

三条の実家の味付けのたまご焼き。 それを1つ、口に入れる。 甘くて、やわらかい。 実家の味付けにも似ているが、違う。 これが好きだ。 「遥登の焼いたたまご美味ぇな」 「正宗さん、たまご焼き好きですよね」 「遥登もだろ。 かきたまのうどんとかチーズの入ったオムレツとか」 からあげを頬張り膨れる頬の三条は、それらをしっかりと噛んでから飲み込んだ。 「正宗さんの味が好きです」 「えっち」 「や、やらしい意味じゃ…っ」 「俺の味が好きなんだろ?」 「味付けの話ですっ」 真っ赤になって言い返すその口に、ウインナーを宛がった。 「あーん」 「あ…、」 「良い顔」 「やっぱりっ」 からかっている訳ではない。 ふざけてもいない。 いや、少しは楽しんでいるが。 ただ、恋人同士の時間を過ごしているだけ。 どうしても歳の差のせいか、三条は遠慮をしてしまう。 1歩引いてしまうことも多い。 気にするなと言っても気にしてしまうのは理解出来る。 だから、こうして対等にいようとする。 遊びながらでも良いから、少しずつなれてくれれば。 「……今度、噛んじゃいますよ」 「遥登になら良いよ」 「マゾですか…」 「そんだけ愛してるからな」

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