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第676話

少しだけ寄っていけと言われ室内に入る。 忘れていたが、ここは外だった。 だけど、そんなの気にならないほど喜んでくれた。 それが、とても嬉しい。 鍵を開ける横顔を眺めながらマクスの中でニヤ付いていたほど。 「酒飲むか? あ、遥登はこれから飯食うのか。 いや、その前に車か? なにでここまで来た?」 「車です…」 「なら、明日だ。 本持ち帰るのに来るだろ。 そん時に飲もうぜ」 「大袈裟では…」 「ばぁか。 こんな嬉しい日はねぇよ」 サッと手洗いうがいを済ませると、また抱き締めてきた。 「先生」 「んー?」 「俺、夢叶えました。 来年度から先生と同じ職業になります」 「ん。 待ってた」 梳くように頭を撫でられ、その心地良さを味わう為に肩に顔を埋める。 背中に手を回し、自らもぎゅっと抱き付く。 この背中に触れたかった。 触れたくて足掻いた。 そして、漸く触れることが出来た。 出来たんだ。 届いたんだ。 「よく頑張ったな」 「頑張りました」 「うん。 花丸の満点だ」 微かに見える貴方が恋しい。 だけど、俺はそこへと歩きます。 見るだけじゃ嫌だ。 隣が良いから。

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