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第677話
「気を付けて帰れよ」
「はい。
あの、急にお邪魔してすみませんでした」
「ばぁか。
邪魔なんてねぇよ。
嬉しいに決まってんだろ」
乱暴に髪を掻き回しているように見えて、大きな手はとても優しい。
愛している、大事だと伝わってくる。
顔も、とてもやわらかくてあたたかい。
自分だけが見ることの出来る特別。
「帰ったら連絡してくれ。
飯作っとくから食うとこ見ててくれ」
「どんな拷問ですか」
「遥登はご家族と食うんだろ。
祝われとけ」
今からご馳走を作るという母親。
ケーキを焼くかとソワソワする弟達。
それらを止めたが、父親がケーキを買って帰ってくるだろう。
小さな頃から、そうやっていつも祝ってくれた。
食卓を華やかに飾ってくれ、歌を歌って祝い、写真の記念を残す。
勿論、大きくなり照れという恥ずかしさもある。
あるが、嬉しい。
そして、これからは長岡ともそれらが出来る。
生まれた時からある家族ではなく、自分達がつくりあげる家族として。
首にかかるチェーンがその証拠。
手首を掴み、心臓へと繋がる指に頬をくっ付けた。
「もう少し待っててください」
「……ほんと、末恐ろしい」
「刮目してください」
「目なんて離せねぇよ」
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