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第689話

「こんにちは」 「あら、優登くん。 おかえりなさい」 小さな造りの保育園に顔を出したのは長男ではなく次男。 駅から直接訪れ、制服のまま。 その姿は長男そっくりではあるが、確かに違う別人だ。 「ゆーと、はぅは」 「今日は俺。 兄ちゃんは大学。 昨日言ったろ」 「わかんない」 「忘れたのかよ。 まぁ、良いや。 ほら、片付けて帰ろうぜ」 「うん」 昨晩渋い顔をしていた兄の様子から、呼び出された内容は予想がつく。 本当にモテる兄だ。 「ゆーと、かばん かしてあげる」 「へいへい」 弟の小さな鞄を首からぶら下げ、手を繋いで小さな小さな教室を後にした。

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