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第694話

持ち帰りの仕事を片付けていると、隣の画面の向こうで本を読んでいる三条が欠伸を噛み殺した。 それをきっかけに時刻を確認すれば真上を過ぎている。 「やべ。 もうこんな時間か」 朝練のある部活動を担当してないとはいえ、明日は──正確には今日──少し早く出勤するつもりだ。 科で話し合うこともある。 いくら夜型だといっても、仕事をするのは日中。 睡眠負債で授業中に眠くなるのだけは避けなければならない。 『キリが良いところまで終わりましたか?』 「んー、あと少しだな。 ここだけ終わったらベッド行く。 遥登は先に寝てろ」 『じゃあ、水飲んでトイレに行って来ます』 気負わない言葉に視線をカメラへと移した。 いつもと同じ顔でふにゃっとしているが、本当に良い大人になった。 ただ単に格好良いだけではない。 優しさも、頼りがいも、ずっと増した。 『行ってきます』 「ん、行ってこい」 三条が時間を使ってくれている間に少しでも早く終わらせたくて、懸命にパソコンを叩いた。

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