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第695話

あんなに暑かった夏が嘘のように、日に日に寒さは増している。 着実に季節は秋から冬へと以降していた。 それと共にあの日からすごく沢山の時間がたったんだなと、この空気が教えてくれている。 あの日。 はじまりの日から。 “特別” だけど、 “当たり前” 多くのことが、そうかわった。 「遥登、なに飲む?」 「正宗さんと同じのが良いです」 「じゃあ、コーヒーな。 牛乳も買っといたんだよ」 「はいっ。 ありがとうございます」 手を洗う隣で、長岡はインスタントのそれをお揃いのマグに入れていく。 これも擽ったいが嬉しい“日常”だ。 「ちゃんと着てくれてんだな。 すげぇ似合ってる」 誕生日プレゼントの私服を見て、こんなにやわらかな表情をしてくれるなんて想像することもしなかった。 なのに、今、目の前で花が咲く。 「正宗さんのだったんだって考えてると最高にしあわせな気持ちになります」 「やっすいやつ。 もっとしあわせにしてやるよ」 「一緒になるんですよ」 綺麗な顔は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに先程のようにやわらかく破顔する。 たった数年。 それが、お互いをこんなにかえてくれた。 「贅沢覚えちまったな」 「?」 「愛してるってことだ」 三条の薬指で輝く指輪も今日も心地が良さそうだ。

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