697 / 729
第697話
目を覚ますと視界の端で細い指がスマホを撫でていた。
目が覚めた瞬間、目の前に恋人がいてくれる心地良さに口元が緩む。
このまま寝たフリをして甘えるのも良いが、それでは不公平だろうか。
いや、公平不公平も大切な基準だが、そうではなくて。
一緒の方が良い。
「遥登」
「あ、おはようございます」
こちらを覗き込んできた顔に手を伸ばす。
「はよ」
「え、…」
そのままスルリと首に手を回し、抱き寄せる。
細く軽い身体は簡単に自分の上に乗った。
あったかくて骨張っていて、それが三条だと理解するのは十分だ。
「忙しくねぇならイチャイチャしようぜ」
「イチャイチャって…」
「例えば、ケツまさぐるとか」
「俺も…まさぐって良いんですか…?」
「えっちぃ」
「……正宗さんから言ったのに」
膨れた顔を隠すように抱き付いてくる背中に腕を回し、自分の上から落ちないように固定する。
忘れることないこの感覚。
早く毎日こう出来たら良いのにな。
「すれば良いだろ。
人間はみんな変態だ」
「…それはそれでなんか…」
「じゃ、俺はまさぐろう」
ともだちにシェアしよう!