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第698話
生暖かい空気と洗剤のにおい。
洗濯物を一気に洗い、乾かす為に長岡はコインランドリーを訪れた。
ついでとばかりに大物まで持ってきたら、それなにの時間を消費することになるが本とスマホさえあれば時間はいくらでも潰せる。
文庫本をパラパラと捲り購入した時に差し込んだレシートを栞代わりにしたページを開いた。
物語の深い海に沈み黙々と読み耽る。
文化祭やテスト製作、会議と少し立て込んでいたせいで、また積ん読が増えた。
まだ読んだことのない自分好みの本が自宅に取り揃えられているのは喜ばしいことだが、早く読み進めたいのも事実。
それでも、その本達は三条が先に読んでくれるので役目はある。
ただの積ん読ではない。
とはいえ、こうして時間をつくらなければ読めないのも悲しい事実だ。
社会人の悲しい性。
だが、すぐに深くまで沈めた長岡はただ文字を目で追うだけになる。
頭の中には手のひらサイズの本からは想像出来ないほど豊かなものに溢れている。
まるで映像が目の前に映し出されているかのように鮮やかだ。
洗濯物が長岡を呼ぶまでの時間いっぱいをそうして過ごした。
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