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第706話

「ご馳走さま」 恋人の癖がすっかり移り、1人でも「いただきます」「ご馳走さま」と言うようになった。 相手の尊敬すべきところは素直に受け取る。 それに年齢は関係ない。 年下からも学ぶことは沢山あるし、反対に年上から反面教師を学ぶことだってある。 大切なのは、それを素直に受け取ることだ。 「部屋もあったかくなってきたし、食ったら眠くなってくるな」 『少し寝ますか?』 「先に風呂に入りてぇけど、動くのもめんどいな」 仮眠してから入浴でも良いのだが、それならヘアワックスを落としさっぱりした状態でふとんで寝たい気持ちもある。 だが、この満腹状態で寝るのも、それでしか味わえないものがある。 夜の睡眠には睡眠の、昼寝には昼寝の良さがある。 選べるはずがない。 『仮眠すると動くのも億劫になるやつです』 「だよなぁ。 入っときゃ良かったって思うのもやだよなぁ」 楽しそうな顔で笑う三条だって、入浴はまだ済ませていない。 先程、弟が風呂に入り終わったとドアの向こうから声を掛けていた。 つまり、最後に入浴する三条はいつでも入れる準備が整っているということだ。 まだ遠慮はあるが、入浴やトイレなどを三条は自分のペースで出来るようになっていた。 付き合いたての頃に比べ、随分と自然体を晒してくれるようになった。 6年も付き合っていればそうか。 「天気予報観たら行くか」 『はい。 この時期は天気予報もコロコロ変わりますからね』 「寒いのだけは確定だけどな」 洗濯物も中々乾かず乾燥機を使っている。 だが、冷たい空気に馴染むと若干湿気ったような手触りになってしまう。 あんなに暑くすぐに乾いていたのが嘘のようだ。 なので、いつもより洗濯物を溜め込みコインランドリーで洗濯から乾燥までを一気に終わらせてしまうことも多々やってしまう。 『あ、でも、夕方の天気予報では今日よりは気温が上がるって言ってました』 「明日、会議あるからそれだと助かる。 会議室、中々あったまらなくて寒みぃんだよな」 『風邪とか気をつけてください。 看病しに行きますからね』 「移したくねぇから気を付けるよ」 『約束です』 「任せとけ。 約束だ」

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