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第714話

炬燵布団のかかっていた背中や腹が寒くなるが、蜜柑を食べるのに起き上がる。 流石に寝転んで食べるのは行儀が悪い。 それに、綾登が覚えたら大変だ。 すると、綾登が隣に座った。 そして、口をあーと開ける。 「お兄さんじゃないのか?」 「いいのぉ」 「そっか。 良いのか」 本人が良いのなら良い。 口に放り込むと、にこにこしながら食べている。 次男が見たら「赤ちゃん」って言うんだろうが、その次男はまだ帰宅してこない。 大方、友人も喋っているのだろう。 自分にも覚えがある。 友人と過ごす時間が楽しくて、それが永遠に続くように思えたあの頃。 ただただ楽しかった。 だけど、今も楽しい。 ちゃんと今でも友人関係が続いていて、会えば一瞬であの頃に戻れる。 それが、田上と吉田なら尚更だ。 社会人になる前に、沢山遊ばなければ。 社会人になっても、沢山遊ばなければ。 例え会う機会がめっきり減ってしまっても、友人にはかわりない。 きっと、2人もそうだ。 「おいしいね」 「美味しいな」 優登も綾登も、そんな友達と出会えたら嬉しい。 そうだと良いな。

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