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第715話

寒い外から帰宅すると、あたたかなリビングに兄の姿がない。 折角お土産があるというのに。 「あれ? 兄ちゃんは」 「あっち」 「クリスマスツリー出してもらってるの。 今、テレビでイルミネーションの話してて」 「ふぅん」 帰宅して早々に、2階の物置にしている部屋へと向かう。 後ろを綾登が着いてきたので先に階段を登るよう誘導する。 これくらいの体重なら支えきれる。 万が一、億が一にでもの話だ。 ゆっくりで良いからと伝えつつも、しっかりとした足取りの後に続く。 「はぁる」 「んー…。 綾登、どうした」 「ただいま」 「お、優登。 おかえり」 室内にひょこっと顔を見せれば、大きな箱を抱えた兄がいつもと同じ顔で迎えてくれた。 「鯛焼き買ってきたから食おうって誘おうとしたらいねぇから綾登が案内してくれた」 「えっへん!」 「そっか。 綾登、ありがとう。 つぅか、もうすぐ晩ご飯だろ。 食うのか?」 兄達の視線が小さな頭へと注がれた。 鯛焼きの1つや2つを食べたって、晩ご飯は食べられる。 勿論、綾登も半分を食べたってお腹に余裕はある。 が、問題は、晩ご飯の前に甘い物を食べるとご飯の食い付きが落ちることだ。 やっぱり甘い物の方が美味しいと思うのだろう。 イヤイヤ期が落ち着いたとはいえは、まだまだ自我を扱いきれていない。 「飯食ったらにするか」 「だな」 「なんでぇ」 「食後に食べた方が、もっと美味しいから。 今日のご飯、豚汁だろ。 たっくさん食べたいし」 「そっか!」 「なに、今日のご飯、豚汁? 最高じゃん」 「おにく えらんだ」 「そういう時は沢山のにすんだぞ」 「わかったっ」

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