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第716話
ツリーだけを組み立て、残りは後に。
今は、目の前のあっつあつの豚汁だ。
「んーまっ」
「良かった。
沢山食べてね」
「うんっ!」
綾登は豚汁を美味しそうに飲むと、頬をふくふくさせながら頷いた。
確かに、豚汁が美味しい。
特に今日みたいに寒い日には殊更だ。
野菜の甘味と豚肉の脂が合わさり、口の中がしあわせだ。
そこに米。
熱々の白米をはふはふと頬張ると、もっとしあわせになる。
味噌汁の存在する世界に生まれて良かった。
「あのねぇ、おにく えらんだの」
「綾登が選んだのか?
だから、今日は特別美味しいんだな」
「んふふっ」
父親にも褒められ嬉しそうな顔だ。
「おいしいねぇ」
明日の昼の分が残れば良いのだが。
にこにこしながら食べている綾登や、食べ盛りの優登。
母が沢山作ってくれていても、残るかあやしいところだ。
こういう料理は、沢山作るとなぜか美味しい。
1人分でも美味しいのだが、なにかが違う。
あれは一体なぜなのか。
「これも、おいし」
「嬉しい」
「兄ちゃんも食えよ」
「ん、食ってるよ」
「綾登が美味いってよ」
「母さんの料理はなんでも美味いだろ」
今日も賑やかな晩ご飯の時間だ。
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