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第718話
「おやすみ」
母親に繋がれたのとは逆の手を振り、綾登は寝室へと向かった。
「なんか飲む?」
「じゃあ、ココア」
優登からの提案に有り難く甘える。
炬燵に脚を入れてしまい、離れがたい。
が、弟ばかりを動かしてはいられない。
「蜜柑持ってくるな」
廊下に置かれた蜜柑箱。
毎年祖父母から送られてくる物だ。
箱からいくつかをパーカーのポケットに入れていく。
暖房のない廊下でよく冷えた蜜柑が腹を冷やしていくので、そそくさと炬燵へと戻った。
「廊下行くなら台所の方があったけぇな」
「俺の方がすぐ終るけどな」
「なんの対抗だよ」
へへっと笑いながら室内へと戻り、ポケットから蜜柑を机の上へと移動させた。
炬燵に蜜柑に、クリスマスツリー。
それから、甘いココア。
沢山の国が混ざった日本が好きだ。
沢山の神がいることを許し、それが自由だといられる国。
「そうだ。
サンタさんのクッキーは俺も食えんの?」
「当たり前だろ。
綾登は絶対に、はうとにあげる!ってでっかいの作るぞ」
「楽しみだな」
炬燵に脚を入れ、クリスマスツリーを見ながら天板に頬をくっ付けた。
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