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第727話

次男と共に一所懸命に生地をつくり、出来たそれを伸ばしていく。 麺棒を上手に使いこなせない三男だが、次男のサポートにより上手に出来ないと泣くこともない。 プレゼントの相手はサンタクロースだ。 それも綾登のやる気になっているのだろう。 サンタクロース様々。 最早、アイドルだ。 「いーい?」 「完璧」 そうして、いよいよお待ちかねの型抜きだ。 クッキー型の沢山入った缶を綾登が見やすい位置に差し出す。 お菓子を作るようになってから優登が少しずつ集めたクッキー型だ。 ハートや星、簡単な動物のシルエットから、キャラクター物。 面白いカタチの物まで沢山集まった。 藁人形や脳味噌の形の型まで入っている。 「どれにする?」 「さんたさん!」 手渡された型を覗き、目をキラッキラッと輝かせた。 まるで綾登の好きなアニメ映画の女の子みたい。 子供の好奇心は、映画の一瞬のようにドラマチックでキラキラしている。 それを潰さないでくれる次男の顔も楽しそう。 「押し付けて、ぎゅってすんだよ。 やってみ」 「ぎゅ」 「で、これをそっと乗せて、優しくぎゅっ」 「ぎゅ…」 “ぎゅっ”言い方の違いが可愛い。 きっと綾登の思う、優しい“ぎゅ”なのだろう。 三条の表情も溶けていく。

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