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第728話
シルパンの上に、可愛らしい形がどんどん増えていく。
サンタクロース、トナカイ、雪だるま。
小さな手の痕が付いていたり、顔のスタンプが押し込まれ過ぎていたり、どれも味わい深い。
そして、弟達の楽しそうなことと言ったらない。
2人とも楽しいのが分かる。
「星は?」
「する」
そんな弟達の足元はあちこちが白くなっているので、フローリングワイパーに清掃用のペーパーを挟んで掃除の準備をこっそりとする。
真剣な綾登の邪魔はしたくない。
だけど、サッと拭いておけば後からの掃除も簡単だ。
だから、用意だけはしておく。
「これ、なぁに?」
「脳味噌」
「のー?」
「頭の中に詰まってるやつ。
綾登も持ってるし、俺もある、
兄ちゃんも」
「もってないよ」
「頭に入ってんだよ。
髪の毛生えてるから見えねぇの」
「じぃじ、ばげだよ。
ちわちわじゃない」
「……くくっ」
祖父が聞いたらショックを受けてしまいそうな発言に、堪えきれず三条は笑う。
優登は顔の変なところに力を入れて笑うのを我慢。
綾登だけで、ぽかんと不思議そうな顔をしていた。
「なぁに」
「いや…、ごめん。
パンパンマンのあんこが、俺達だと脳味噌ってやつなんだよ。
でも俺達には骨とか皮があるから、そもそも髪の毛がなくても見えない。
パンパンマンだって、顔を分けてあげる時にしか見えないだろ」
「そっかぁ」
「あとな、じぃじは薄いだけでハゲじゃねぇよ」
「はげじゃない」
「そう。
ハゲじゃない」
祖父の為にも、それは教えなければいけない。
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