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第729話
予熱されたオーブンに鉄板を入れれば、あとは焼き上がるのを待つだけだ。
先程、綾登が上手に焼ける魔法をかけたのできっと良い焼き色になる。
「まつ?」
「待つ」
「どんぐらい?」
「ここの片付け終わるくらい。
早く終わったらココア飲めるぞ」
洗い物をして、拭き掃除をして、を綾登とやれば30分は優にかかる。
焼き上がりの方が早いだろう。
だけど、使ったら片付けるのは当然のこと。
幼い綾登も例外ではない。
「ここあ!
すき!」
「手伝うよ」
「良いよ。
使ったのは俺と綾登なんだし」
「じゃ、綾登の保護者する」
「ほちゃ」
綾登の顔に付いた粉を払う。
どうしたら顔に粉が付くのか、ところどころ白くなっている。
エプロンも払ってから脱がせて、2人でワイパーで床掃除だ。
両親の真似をし時々ワイパーごっこをしているので、本物のワイパーを使えて楽しそうな顔をする。
どうして子供は、大人の真似をこうも楽しそうにするのか。
それとも、子供の目には大人が楽しそうにしていると見えているのだろうか。
自分はどうだったか考えてみる。
「ねーねー、たのしみね」
「楽しみだな」
「おいし、かなぁ」
「きっと美味しいよ。
優登のクッキー美味しいだろ。
綾登が手伝ったんだからなおさら美味しい」
「さんたさん、にこにこなる?」
「なるよ。
美味しくてびっくりするかも」
嬉しそうな顔をした綾登は優登のところへと駆けていった。
そして、美味しくてびっくりするってと舌足らずに教える。
きっと、サンタさんに兄が褒められて嬉しいのだろう。
そういう顔をしている。
だからこそ、優登もそっくりな嬉しそうな顔を返した。
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