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第734話

ケーキと一緒に買った、あたたかいお茶を両手で転がす。 冷たい指先をあたため解したいのだが、如何せん寒い。 熱々だったお茶はコンビニから駐車場までの道程で冷めてしまったような気がする。 「寒いか?」 「平気です。 今日は凄暖着てますから」 普通のタイプのあたたかな肌着も防寒力はあるが、それの上位互換。 確かに、厚みがあるからか鈍い自分でもあたたかいと分かる。 それの上からパーカーを着て、プレゼントのマフラーを巻き出てきたが、案外いけるものだ。 末端は冷えるが身体自体ははあたたかい。 だけど、相手は長岡だ。 過保護で甘やかすことが楽しくて仕方がない人。 ほんの少しの変化も見逃さず、指先の冷えに気が付いたようだ。 「寒かったら言えよ。 上着貸すから」 「ありがとうございます。 けど、正宗さんが風邪ひいたら心配ですよ」 「遥登が風邪ひかねぇなら良いよ。 それに、冬休みだしな。 風邪ひくなら生徒の休み中だ」 長岡は、ケーキのパックを開けながらなんてことのないように言う。 だけど、その言葉から生徒や他の教職員達を思っていることが伝わってくる。 冬休みになったタイミングなら、補習はあれど主な仕事は自分のことだ。 こういう仕事に対して真面目なところが好きだ。 大好きな古典に関係しているからと本人は言うだろうが、それでも誰かのことを考えられる人というのはとても素敵なこと。 改めて好きな人が長岡のような人であることを噛み締める。

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