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第740話
「それで、朝になったら人参のヘタしか残ってなかったんです」
「誰が食ったんだ?」
「サンタクロースですよ」
「しっかりしてんな」
キャップを被るからと助手席に乗り直した三条は手を温めるようにあたたかなペットボトル飲料を両手で転がした。
ころ、ころ。
「寒いか?」
「大丈夫です。
正宗さんは寒いですか?」
「大丈夫だよ。
遥登がくれた充電式カイロ早速使ってんだよ」
「あったかいですか?」
「すっげぇ良い。
学校でも使うな」
ほら、と三条の手に握らせると、ぱっと顔が嬉しそうに綻んだ。
素直な反応が、すごくらしい。
飾り気がないからこそ、本物の反応だ。
「嬉しいです」
「俺が嬉しいんだけどな」
「俺も嬉しいです」
ケーキを受け取る為に、少し遠回りをする道程さえこんなにしあわせだ。
「あ、でも、部屋についたらあっためてもらおうかな」
「え…?」
「え?」
キャップで顔の半分を隠したが、真っ赤な耳は丸見えだ。
あぁ、やっぱり今日はとびきりに良い日だ。
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