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第741話

解錠し平均身長を優に越した男2人で狭い玄関に立つ。 玄関は冬のにおいがする。 三条は濡れないように自身の上着で庇った真っ白い箱を、そっと玄関に置いた。 それから肩や頭につく雪を払う。 「遥登、おかえり」 「ただいまです」 空から降ってくる綿雪みたいにふわふわ笑うのが長岡の気を緩めた。 すっかり恋人にしか見せない顔をしている。 誰が見たって、目の前の恋人が可愛くてしかたがない顔だ。 とても特別だと分かる。 「一緒にケーキ食おう。 それから、ダラダラしてゴロゴロもしような」 「はいっ」 「昼飯はなんにする? たまにはパスタ食うか?」 「はいっ」 先に靴を脱ぎ終えた長岡が少し身を屈め、三条にだけ聴こえる音量で鼓膜を震わせた。 「セックスも?」 耳を隠すように手で被われてしまう。 けど、そんなの関係ない。 赤いのは耳だけではないからだ。 その色で、答えは分かる。 「ほんと、かわい」 「……俺だって大人なんですからね」 「んー、知ってる。 春から社会人だもんな。 なら、今の内に学生の遥登をあじわっとかねぇと」 「え…」 まだまだ晩ご飯までは時間がある。

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