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第742話
「まってください…っ、明るい…」
「そりゃ、日中だからな」
「……恥ずかしいです」
「最高だな」
「……サディスト…」
「知らなかったか?
マゾヒスト」
いつもより低い声に艶を感じる。
流石に玄関はまずい。
まずいと思いながらも、三条は簡単には玄関の壁際まで追い詰められた。
視線をさ迷わせても助けはない。
その時、恋人の部屋に似つかわしくない白い箱の存在を思い出した。
「け、ケーキ…、冷蔵庫にいれないと…。
それに、手洗いもまだ…」
ギラ付いた目が真っ直ぐに見詰める。
意地悪で“待て”を提示しているわけではない。
うがい手洗いはしておかなければ。
見詰め返す目に、長岡は折れた。
「ま、時間はあるしな」
「…はい」
「ほら、部屋あっためるから行こうぜ」
スッとケーキを持つと、もう片手で腕を取られた。
そして、末の弟のように部屋へと引く。
「ケーキは食後にするか?
おやつか?」
「どちらでも…」
「んー、じゃあ、腹の具合で決めるか」
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