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第743話
「遥登、ゴミ捨てて良いぞ」
「あ、ありがとうございます」
先程のゴミを分別しポイッと捨てると、そのまま手洗いをする。
そこで気が付いたのは、水道から出ているのがお湯だということ。ゴミを捨てている間に長岡が手洗いを済ませ、水からお湯へとしっかりと切り替えてくれていた。
何気ないことかもしれない。
だけど、自分はまだ冷たい状態からぬるいお湯で手を洗ったんだ。
そう思うと、恋人の愛の深さは量りきれない。
「ありがとうございます」
「ん?」
「大好きです」
上着を脱ぐ背中に抱き付くと、腹に回す腕に手が触れる。
「あったけぇな」
「そういうところですよ」
「なにがだよ」
「尊敬するところです」
「尊敬してくれてんのか」
先程とは異なる、楽しそうな声に三条の頬もゆるゆるだ。
どっちが好きだとか、どうだとかはない。
長岡は長岡で、サディストでも優しくても大好きだ。
「知らなかったんですか?」
「さぁな」
「あ、子ども扱いです」
「大人扱いしてやろうか?」
「…それは、」
「ま、コート脱いでゆっくり飲み物飲もうか」
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