758 / 984

第758話

ソファに座るように促され、失礼します…と声をかけてから腰を下ろす。 更に自分も座るとソファは軋んだ音をたてた。 「お願いします」 「任せとけ。 熱かったら言えよ」 電源を入れればすぐに温風が三条の髪を揺らす。 サラサラしていて癖がない髪。 三条本人は細くてあまり好きではないらしい。 将来が心配だ、と。 禿が気になるのはみんな同じだ。 だが、禿げたところでこの気持ちはかわらない。 そんな生半可な気持ちで家族になったつもりない。 気になるなら、植毛でも増毛でもすれば良い。 選択肢は沢山あるんだから。 どんな三条でも愛している自信しかない。 襟足に手櫛を通すと三条が反応した。 「…っ」 「悪い、熱かったか」 「あ……、ちがくて…」 「どうした?」 ドライヤーを一旦止め顔を覗こうとして、それを腕で隠されてしまう。 「………………かん、じ、て…しまって、」 感じた…? 「指が、…掠めて……それで…」 事後の敏感な身体に、良からぬ刺激を与えてしまったらしい。 「それで、感じちまった?」 「……はい、」 「ん。 気を付けるからもう少しだけ乾かしても良いか?」 こくりと頷く頭に笑みを隠す。 「じゃ、乾かすな」 再度電源を入れ、今度は気を付けながら髪を乾かしていく。

ともだちにシェアしよう!