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第759話
「美味しそうです」
「冷凍だけど揚げ茄子も入ってんぞ。
好きだろ」
「大好きです!」
茹でた麺の植えに野菜を足したミートソースをかける。
長岡の作ってくれる食事の美味しさを誰よりも知っている三条はにっこにこの顔で、皿を運ぶ。
その後ろを皿を持った長岡が追った。
好きな物は勿論、味だって分かる。
甘い、辛い、酸っぱい。
一言で簡単に済ませられる表現の中でも、三条の好みが分かる。
それがすっかり無意識で料理というかたちで反映することも出来る。
しっかり飼われているのは自分の方だ。
「腹減ったろ。
まだおかわり分もあるから、遠慮せず食えよ」
「嬉しいです。
ありがとうございます」
「沢山運動したもんな」
「すぐそういうことを言う…」
「嫌いか?」
「屁理屈言いますよ…」
「良いぜ。
遥登ならな」
物言いたげな目に、月日の長さをふと思った。
だけど、それは本当にふとだ。
すぐに目の前に向き合う。
だって、折角目の前に本物が居るんだ。
今はこっちが優先。
「ほら、冷めない内に食おうぜ」
ポン、と自分の隣を指定し独占欲も見せる。
こんなに骨抜きにされた責任をしっかりととってもらわないとな。
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