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第762話

半分ほど食べたところで、長岡はケーキよりコーヒーの方を口に運ぶようになった。 もともとコーヒーも無糖で飲む人だ。 口も脳も充分すぎるほどの糖分を摂取したのだろう。 「甘いですか?」 「ちょっとな」 「ごちそうさまします?」 「俺のことは気にすんな。 食えるなら、食いきってくれると嬉しい。 けど、無理はすんな」 つい、口からご馳走さまします?なんて末の弟に対する言葉が出てしまったが、長岡も慣れたような反応。 オンライン生活でも、1日また1日と日々を積み重ねてきた深さを感じる。 見せたことのない姿はないようにも思えるほどの日々だ。 「平気です。 俺ですよ」 「けど、血糖値上がって眠くなるとかあんだろ。 そういう食えない時は、遠慮なく言えよ。 ラップして冷蔵庫入れとく」 「はい」 もぐもぐと食べ続ける。 甘いが美味しい。 味覚もあまり変化はないように思えるが、“甘いから美味しい”から“甘いが美味しい”と思った。 成長期と呼ばれ時期は過ぎたが、まだまだ成長しているようだ。 そういう瞬間も長岡と過ごせて嬉しい。 いつか、成長することが止まっても、今と同じように隣にいるのが想像出来る。

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