762 / 984
第762話
半分ほど食べたところで、長岡はケーキよりコーヒーの方を口に運ぶようになった。
もともとコーヒーも無糖で飲む人だ。
口も脳も充分すぎるほどの糖分を摂取したのだろう。
「甘いですか?」
「ちょっとな」
「ごちそうさまします?」
「俺のことは気にすんな。
食えるなら、食いきってくれると嬉しい。
けど、無理はすんな」
つい、口からご馳走さまします?なんて末の弟に対する言葉が出てしまったが、長岡も慣れたような反応。
オンライン生活でも、1日また1日と日々を積み重ねてきた深さを感じる。
見せたことのない姿はないようにも思えるほどの日々だ。
「平気です。
俺ですよ」
「けど、血糖値上がって眠くなるとかあんだろ。
そういう食えない時は、遠慮なく言えよ。
ラップして冷蔵庫入れとく」
「はい」
もぐもぐと食べ続ける。
甘いが美味しい。
味覚もあまり変化はないように思えるが、“甘いから美味しい”から“甘いが美味しい”と思った。
成長期と呼ばれ時期は過ぎたが、まだまだ成長しているようだ。
そういう瞬間も長岡と過ごせて嬉しい。
いつか、成長することが止まっても、今と同じように隣にいるのが想像出来る。
ともだちにシェアしよう!

