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第765話
喉の乾きで目を冷ますと腕の中に三条がいた。
昼寝をしていたんだと思い出し、その贅沢さを噛み締める。
教育実習から教育採用試験まで本当によく頑張っていた。
悔しさを抱えながら、それすら抱き締めていた姿ばかりみていたせいか、寝顔の幼さがより一層愛おしく見える。
いつの間にか22歳だ。
だけど、まだ22歳。
子供だとも思う。
だけど、あの頃より格好良くなった。
漸く自由…という訳ではないが、一時の休息だ。
教育採用試験の合格通知が届いた後からも忙しい。
教育採用試験はあくまでも教員になれる資格でしかなく、学校に所属する為にはまたすべきことがある。
例えば、今後どのような流れで学校に採用され、着任するかの説明会や、健康診断だ。
そして、これから、教育委員会の担当者、校長などとの面接もある。
この辺りなら2月だ。
とはいえ、この面接はどの学校に適しているかの振り分けに使われるもので、本試験ほど肩に力を入れなくても良いのだが、そんなものは経験してみないと分からないもの。
どれくらい肩の力を抜いて良いかなんて自分も経験したから分かるだけのことだ。
それをこの子もこれから経験する。
それを経て、3月に勤務校が決まるのだが、その間も三条は勉強を止めはしないだろう。
なにが役立つか分からない。
だから少しでも多くの知識を頭に詰め込む。
笑ってそんなことが出来るような子だ。
俺の自慢。
胸を張って誇りだと言える。
恋人としても、生徒としても。
もう少しだけ踏ん張ってくれ。
そんな願いを込めて額を撫で、手の上からキスをした。
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