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第766話

ブランケットの山がゆっくりと上下している。 そこへ忍び寄る小さな影。 「わっ!」 「びっ、くりした…」 昼寝をしていた三条を起こしたのは綾登。 にっこにこの笑顔で兄に抱き付いていた。 「綾登、兄ちゃん起こすなって言ったろ」 「やぁだぁ」 年末の空気に飲まれることなく、三条は勉強したり弟達と遊んだり、時々昼寝をしたりして過ごしている。 今も綾登と一緒に昼寝をしていたはずなのだが…。 「やだじゃねぇって」 「いっしょだもん…」 ぷっと怒る綾登と優登の後ろで母親がその前に手洗いでしょと声をかけた。 手洗いということは、外に出ていたのか。 そういえば、綾登はコートではないが厚着をしている。 「綾登、どこ行ってたんだ?」 「おいも!」 「石焼き芋売ってるトラックが前を通ってね、綾登と優登が買いに行ってくれたの」 「うんっ!」 「兄ちゃんの分もあるよ! 食お!」 「やった」 寝起きで喉も乾いているが、焼き芋は魅力的だ。 腹持ちも良いし、甘くて美味い。 「兄ちゃんなんか飲む?」 「水頂戴」 「あーと、もってく!」 「溢すなよ。 絶対な」 「まませて!」

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