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第769話
「よく噛めよ。
あんまり詰め込むな」
「んっ」
もぐもぐと頬袋を膨らませながら焼き芋に齧り付く姿に声をかけるが、大丈夫だろうか。
「1点集中だな」
「優登もわりとそうだろ」
「え゛…」
「お菓子作んのだって、小学校の低学年からだろ。
なげぇだろ」
「お菓子は…まぁ。
兄ちゃん、食ってくれるし」
「ゆーとのおかし?
あーとも!すき!」
突然話に入ってきた綾登だが、真っ直ぐな好きの気持ちは、この顔を見たら分かる。
とびっきりの笑顔だ。
いくら反抗期でも、この笑顔は嬉しいだろう。
目の前で“そういう”顔をしている。
「だってよ」
「まぁ…、蒸しパンくらいなら作るけど」
「すきぃ」
「ほうれん草のやつな」
「はっぱ、やぁ」
「お母さんはチョコレートのが良いな」
「俺も」
「あーともっ!」
更に母親までもが話に加わり、わちゃわちゃだ。
「ほうれん草」
「ちょこっ」
だけど、家らしくて賑やかで好きだ。
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