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第770話

今年もあと僅か。 沢山のことがあった1年だった。 中でも教員採用試験は大きかった。 教育実習とはまた違った、それこそ自分の人生を決める大きなこと。 揺らぐことのない夢への憧れ。 それを全力で試験にぶつけた。 そして、花開いた。 とても大きな出来事だった。 まだ、これから面談があるが、学校に在籍出来るかどうかの判断は3ヶ月後には決まっている。 いや、3ヶ月もないんだ。 不安もある。 だけど、古典は美しい。 その美しさがあれば大丈夫だ。 だって、 『遥登、明日部屋来るか?』 「はい。 お邪魔にならなければ、寄りたいです」 『林檎と洋梨貰ったんだよ。 1人じゃ食いきれねぇから食ってくれ』 「嬉しいです!」 長岡がいてくれるから。 「じゃあ、なにか飲み物買っていきますね」 『気にすんなよ。 遥登が来てくれるだけで嬉しいし』 漠然とした憧れが、夢へとかわり、それがもうすぐ生活の一部になる。 不思議な話だ。 綺麗だと惹かれた物語にどっぷりと浸かり、それを説く仕事につける。 どこかふわふわした気持ちもある。 だけど、現実なんだ。 『じゃ、行くな』 「はい」

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