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第771話
「優登?」
「あ、一樹来るって。
準備出来たら、行こ」
上着を羽織っていると、次男がひょこっと顔を出した。
これから、優登の友達─一樹─と3人で2年参り。
その後、2人と分かれて長岡と合流だ。
オフで生徒に会いたくないと言う長岡だが、こういう時は生徒に会う確率が上がっても大切にしてくれる。
甘やかされている自覚はある。
あるが、長岡が他人を甘やかすなんて自分くらいなので、それに甘えてさせてもらっている。
「寒くねぇ?」
「ふふんっ。
凄暖着てるから大丈夫」
マフラー1枚でもあった方があたたかいが、まぁ、大丈夫か。
寒さよりお洒落の方を気にする年頃になったことに笑みを溢した。
もう16歳だ。
いつまでも小学生のままではない。
「甘酒あるかな」
「なんか、今年はキッチンカー来るらしい話聞いたな。
ご飯系のやつ」
「最高じゃん」
「ご近所さんに聞いただけだから、本当かは知らねぇんだぞ」
「なきゃ、コンビニ行ってホットスナック食いながら帰るよ」
弟達との2年参りが終わったら、少しだけ長岡と会う予定だ。
ほんの数十分の為に車を走らせてきてくれる。
そんなのは悪いと申し出ても、「俺は会いてぇけど、遥登は違うのか?」と甘えるような目で言われてしまった。
すっかり自分の扱い方を心得られている。
今思い出して、あの顔は良かった。
長男の心を擽る顔だった。
染々と恋人の顔の良さを噛み締めながら、外へと出た。
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