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第772話

「あ、一樹!」 「あ、優登! 遥兄も、こんばんは」 「こんばんは」 一樹も、少し見ない間に大人っぽくなった気がする。 楽しそうな弟達の後ろを三条はゆっくりと歩く。 雪がチラ付き、同じく2年参りへと行く人達の声が聞こえ、お寺でも灯りと暖とりに一斗缶の中で焚き火がくべられている。 お正月だ。 すべてが、そう言っている。 「そういえば、遥兄は卒業出来そう?」 「うん。 単位も足りてるし多分大丈夫」 「院とかは?」 チラリと優登を見ると、首を振った。 「俺、運が良ければ春から先生になんだよ」 「えっ!?」 今年最後のびっくりだろう顔に兄弟で笑った。 そんなに驚かなくても良いのに。 だけど、そもそも教師になりたいということは知らないだろう。 学部も教育学部ではない。 「優登っ、なんで言ってくれなかったんだよっ。 おめでとうございますっ」 「ありがとう。 けど、まだ決まった訳じゃなくて」 「けど、すごい! 夢だった?」 「うん。 夢だった」 憧れだった。 俺にとっては大切な気持ち。 「ひひっ、かっけぇ」 「一樹にも甘酒買ってやるよ。 好きだろ」 「やった!」

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