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第773話

深夜だというのに神社は賑やかで、なんだか空気もあたたかく感じる。 「おー、人がいっぱいいる」 「迷子になんなよ」 「迷子になったら遥兄目印にして集まろ」 合理的というかなんというか。 けど、優登も一樹も楽しそうだ。 こんな時間に外出なんて、あまり機会のないこと。 それを友人と出来るのだから楽しいのは分かる。 誘って良かった。 ん? メッセージ? 冷たくてポケットに入れていた手でスマホを取り出すと、アプリを開く。 すると簡潔なメッセージが届いていた。 『後ろ』 すぐに振り返ると、人並みから飛び出た頭が1つ。 「っ!」 『あんま見てるとバレるぞ』 続いて届いたメッセージに視線を戻す。 確かに、ただでさえ目立つ身長だ。 それに、優登も一樹も文化祭で長岡先生に会っている。 印象に残ることは避けたい。 『また後でって言ったろ』 『こんな早く来てるなんて思いませんでした』 『言ってないからな。 言ったら気にするだろ』 本当に自分のことを心得ている。 そういうところは長岡先生と同じだ。 とはいえ、この距離なのは少し寂しい。 どうせならもう少し近くが良かった。 「遥兄、グミ」 「ありがとう」 「美味しいよ」 『保護者が終わったら、沢山甘えて良いからな』 本当に、俺の扱いが上手だ。

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